②私が見つけた詩・短歌・俳句・川柳・そして手紙②


新聞を読んで感動した子どもさんの詩やティーバッグの裏にプリントされたお馴染みの新俳句、そして雑誌で知った短歌や川柳、更に今回は手紙大賞を受賞した5編の手紙も加えて紹介したい「私が見つけた詩・短歌・俳句・川柳そして手紙②」です。
 



まずは朝日新聞に掲載された日本一短い手紙のコンクール「一筆啓上賞」で大賞になった5編の紹介です。今年のテーマは「失敗・成功」、文字数は句読も入れて40字以内、福井県坂井市で生まれてもう33回目を迎える手紙のコンクールです。           



<天国のママへ> 石川・金沢市 山口結衣8歳

漢字テスト「手紙」を「毛紙」と書いた。ばあばが温かい手紙だねと笑ってくれた。



<前田先生へ>  福井・坂井市 上條美和10歳

失敗× の角度を変えると成功+ になる。ずっとわすれません。



<おとうとへ> 和歌山・有田市 秦凛歩17歳

かけっこ一とうしょうになったね でもね「ようい」で走りだすのはだめなんだよ。



 

 

 

 

<6歳の息子へ> 愛知・尾張旭市 岡桃子34歳

車に傷をつけた私に「ママすごいよ!流れ星みたい」って。傷、そのままにしておくね。



<結婚をためらう息子へ> 千葉・柏市 渡会克男 75歳

失敗とか成功とか、ロケットの打ち上げとは違うんだよ、結婚は。

 



 

 

 

33年続いているこのコンクールを主催しているのは福井県坂井市です。

坂井市丸岡町にゆかりのある徳川家康の忠臣、本多作左右衛門重次が陣中から妻に宛てて送った例の有名な短い手紙が、このコンクールの由来だそうです。

「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」

心配ごとを無骨な手紙で妻に伝える本田作右衛門重次の姿は、まるで黒澤映画で三船敏郎演じる侍のようで心温まります。因みにお仙とは、後の越前丸岡城主本多成重のことだそうです。





次はこどもの詩と俳句です。読売新聞に掲載されました。

<だいすき>   杉村実音花 年少

まま だいすき

ままっていいにおいがするよね。

ダンゴムシとおなじにおいがする

まま だぁいすき

 



なんて素晴らしい表現なんだろうと目が点のようになりました。そしてこの詩を

紹介したくて、卒業したつもりのコラム欄にまた向き合ってしまいました。

「ダンンゴムシとおなじにおい」だなんて、いじめになり兼ねない表現だというのに、宝石のような存在感を持って光を放っています。言葉は使い方や使う人の気持ちひとつで、刃にもなりカイロのような温かい存在にもなる。そのことを改めて感じて、肝に銘じた朝のひとときでした。



<期末テスト>   山田愛華 中3

テストの時間

その時私はぜつぼうした

なぜかというと

うらめんに

かんたんな内容の

問題がのこっていた

これはとても事件です

中学受験のお子様を持つ私の友人は、子供さんには「答えのない問題に立ち向かい世界で戦える実力」を身につけてほしいと願っています。しかし、塾では「必ず答えの出る問題を短時間に間違わないように回答する」そして「解がない問題を選ぶ(避ける?)」訓練をひたすらするのが現実で・・・「これが本当に良いのだろうか」と悩むのだそうです。

かんたんな内容の問題を真っ先にやることは試験の「いろは」かもしれません。「残してしまった」とは絶望したくもなるでしょう。でも、裏面を確かめなかった失敗を「事件」と表現するユーモアを持つこのお嬢さんなら、社会に出ても周囲の人に愛されて楽しく生き、例え困難に出会ってもきっと乗り越えて前に進んで行くに違いありません。実はそれが生きる上で何より大事なことなのだと、伝えてあげたくなる詩です。



<雲の上> 山口綾加 中1

横か下に雲か青空のイラスト


昼下がりの午後の授業

ねむたい授業

先生の話は子守歌

空を見上げた

雲が浮いていた

雲の上へ行ってくる

「行ってきます」  

 



誰にも経験のある睡魔と戦う午後の授業を、こんな風にユーモアを持って言葉にできるなんて羨ましい。選者の評は「早めに戻ってきてくださいね」でした。



<姉>      長嶺由樹 中1

姉がとつぜん

来世は花になりたいと言った

それは笑いながら言っていたけれど

ぼくは姉がうそをついている

顔ではないと思った

姉へ

何かこまっているなら話は聞きます

少し前に読んだ詩です。中学1年生でお姉さんを心配する弟さん。余程小さい頃から可愛がってもらったのでしょうね。胸がきゅんとする詩です。今は背も伸びたことでしょう。



<俳句>

*ぼくがさきぎんなんとるよたぬきさん  福島・天栄村 有馬大智 小2 

植えたとうもろこしを猪がみんな食べてしまったと農家で聞いたことがあります。人間と野生動物の共生は難しいけれど、こんな風に暮らせたらいいねと思います。



 

 

 

 

*かきの木のみがペしゃんこでかわいそう 東京・三鷹市 加藤結月 小1

熟柿のことでしょうね、ぺしゃんこになるのは。リンゴやナシなどの他の果物におきかえてしまうとなりたたない。こういう句は「季語が動かない」といっていい句とされるのだと選者の方の評でした。

 



 

 

 

 

*父の背を越して十五の春一番      神奈川・横須賀市 佐々木祥一郎15

お茶を飲もうとティーバッグを手にした時に目に入り、「力強い俳句だなあ」と記憶に残りました。伊藤園 新俳句大賞最優秀賞作品であり、「第六回」文部大臣賞受賞作品でもあるようです。今この青年は、歩いているのでしょうか?それとも自転車を漕いでいる?「木枯らし」ではなく「野分」でもなく「春一番」が吹く中を前に向かって進んでいる青年の姿の先には、青空と、ぐんぐん伸びる緑色の木の芽があって・・・日本の将来を託したくなるような景色が見えてきます。



最後に大人の俳句と川柳、そして短歌を紹介します。


*ポケットに鍵と胡桃と彼の手と    桐島洋子

才媛にしてエッセイストである桐島洋子さん(桐島かれんさんのお母さん)のエッセイの中にあった俳句です。いかにもこの方らしいリズムのあるおしゃれな俳句で、ずっと昔に読んだはずなのに、今もオーバーのポケットに手を入れると甦るほどインパクトがあります。桐島洋子さんという方は、女性の生き方にひとつの風穴を空けた方ですから、余計にそう思えるのかもしれませんが。

 

*前向きの姿勢くずさぬ赤い靴  菅沼輝美

私の友人であるこの方は地域に根を張り、周囲から頼りにされて毎日を忙しく送っています。川柳作家としても知られていて、自分の作品を載せた年賀状を毎年送ってくれます。百歳に近い親御さんの作品も一緒にです。「精鋭作家川柳撰集」という本に「親と子の主張譲らぬ湯がたぎる」と歌った彼女の作品が載っていました。こういうことを歌にできる家族を、幸せな家族というのだなあと思いました。

 



*コーヒーを入れましょうかと寒い朝先に言葉で温められる    樋口なお

日本海側は大雪で関東はカラカラ。今年も厳しい冬の日本列島です。春よ来い!



                                              以 上
 

2026年03月10日