子どもが紡ぎ出す柔らかな言葉に出会って、
どんな有名詩人の言葉もこれほどには心を動かされないと思うことがあります。
あなたに読んでほしい「あなたに会いたくて生まれてきた詩」です。

宗 左近 選      新潮社             
「あなたに会いたくて生まれてきた詩」  より 


さ く ら     酒井健司 

おばあちゃん
おはなみにいって
さくらのはなが
ごはんのうえに
おちてきたら
どうしたらいいの





3歳の幼児の作品だそうです。
白いご飯の上に柔らかな手を伸ばし
はなびらを取り除こうかどうしようかと
思案している可愛い姿に・・・・ 泣けます。
                                      
                                  



黒 部 ダム まつざき やす子

きのうは
あさって だったでしょう
   
今日は
あしたでしょう

あしたになったら
今日なんだよね

黒部ダム
行くの






小学校3年生の作品だそうです。
子どもの頃、遠足は本当に待ち遠しかった。
1ヶ月も前から指折り数えたものです。
今日はあしたの準備
そしてあしたはいよいよ「本日 出発!」なんですね。
表現のうまさと、懐かしさに・・・・泣けます。 
                                                          



おとうちゃん大好き 小沢たかゆき

おとうちゃんは
カッコイイなあ
ぼく おとうちゃんに
にてるよね
大きくなると
もっとにてくる?
ぼくも
とうちゃんみたいに
はげるといいなあ
                     






作者は当時1年生  
お父さんがほんとに格好良く見える年頃です。
こんなふうに子どもから素敵な詩をプレゼントされたお父さんは
嬉しくて泣けますね。
泣いているお父さんを見て
こちらも・・・・もらい泣きです。
                                                                               


マ   マ 田中大輔

あのねママ
ボクどうして生まれてきたのかしってる?
ボクね ママにあいたくて
うまれてきたんだよ
                     


3歳の幼児が話かけてきた言葉を、ママが書きとめたものだそうです。
何の言葉も要りません。
ただ鑑賞し、味わい、それから
このお子様に幸多かれと・・・・祈ります。
                                                                               


お 父 さ ん 山上岳彦

お父さんは 駐在のおまわりさんだ
ときどき 本署に行くよ
朝は七時半 帰って来るのも七時半 
とまりもあるよ
家にいるときは よく手仕事をする
物を作るのが しゅみなんだ
いそがしい毎日だ
ぼくの宿題も見てくれるよ
火事 じこ じけん
かならず行くよ
あわてて行く
帰るとつかれた顔で
むっつり屋だ
それに
引っこしが なれっこなんだって
                     






「秋田沖大地震*津波遭難児の遺稿集」より
作者は当時小学校3年生
お父さんのことをよく見ています。
そういう言葉を使ってはいませんが、お父さんを「尊敬」しているのが伝わります。
お父さんを支えるお母さんの姿まで見えてきます。
何気ない日常がどんなに幸せかと教えてくれます。
そんな日常が理不尽に絶たれていいはずがない。
東日本大震災で見た光景を思いだし・・・・私は泣きます。
                                                                               



最後に読売新聞の紙面から
愛媛県のある学園の子どもたちの詩をご紹介します。

作曲家の池辺晋一郎さんはこの詩に出会い
言葉を失うほどの感銘を受けてひとつの合唱曲を作ったそうです。
30年以上前の話
知的障害のあるお子様たちの詩です。

 
  そらを みよったら
うえの かみさまが
わたがしを つくって
なげていました
 
 
  せんせい、
この木のねっこが
のどがかわいて
みずがほしいと いよるで
 
 
  おうちと がくえんと
ながいかくれんぼです
(中略)
お母さんたちは
みんなを さがしています
春休みや
夏休みや
冬休みにみつかります
(後略)
 
  以上














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