小湊鐵道・いすみ鉄道で巡る房総半島横断の旅
 
早春は菜の花で沿線が埋まり、4月、5月はタケノコ狩り。夏は海水浴の家族連れで賑わったかと思うと紅葉の養老渓谷には中高年が繰り出してと、一年中誰かがどこかで何かを楽しんでいるのが房総です。撮りだめた写真を基に、沿線の見所と味をご紹介します。
ご一緒に房総半島横断の旅を楽しんでみましょう。


小湊(こみなと)鐵道
 五 井 駅  
小湊鐵道は五井駅から始まります。
東京から五井までは内房線です。五井で駅弁を購入して小湊線に乗り換え、車窓に目をやりつつ、はたまた味わいつつ走ること39.1Km。上総中野駅が終点です。
五井駅で購入した「巻き寿司弁当」300円也。房総に伝わる飾り巻き寿司です。
他にも「あさり弁当」や「さば弁当」「おにぎり弁当」など、どれも500円前後と安価で美味しい弁当が並んでいます。「あさり弁当」など出汁がしみこんでいて絶品です!
 
 飯 給 (いたぶ) 駅
3月に入ると上総舞鶴駅から養老渓谷駅にかけて黄色の絨毯が広がります。
この季節、なかでも写真愛好家が多く集まるのが飯給(いたぶ)駅でしょうか。難語駅名のひとつですが、そのレトロな外観に加えて周囲に咲く満開の桜や菜の花が文字通りの花を添えて、どこか懐かしくて美しい里山の風景を醸し出します。
TVドラマで高校生の旅立ち(卒業)の場面があったら是非ここを使ってほしい!
 
南いちはらの菜の花ばたけを走る小湊鐵道。
地域の協力(子どもを含む)で、あちらこちらにこうした畑が広がります。

 養 老 渓 谷 駅
養老渓谷駅は養老渓谷温泉や養老渓谷への玄関口です。
養老渓谷は上流までかなりの距離があります。そこで駅前から定期バスに乗り、途中は遊歩道を使ってゆったりと歩いたり滝巡りをしたりと、それぞれのスタイルと体力で散策を楽しむことをお勧めします。

養老渓谷温泉は黒湯とよばれるヨウ素を含むちゃ褐色の温泉と無色の温泉の2種類があり、またミストサウナのような洞窟風呂、露天風呂など、宿それぞれで趣向も違います。
渓谷歩きで疲れた体を温泉で癒やし、鮎の塩焼きで一杯やるのもここの大きな楽しみです。
 
い す み 鉄 道
 上 総 中 野 駅
上総中野駅は小湊鐵道の終点であり、いすみ鉄道の始発駅です。
いすみ鉄道はここから大原まで全長26.8Km。
小湊鐵道同様、3月には沿線に社員とボランティアが蒔いた菜の花が開きます。
菜の花の間をを走り抜けるムーミン電車。
北欧生まれのムーミンが、陽光溢れる房総に出現するなんてちょっと不思議な気がします。少々の違和感を感じそうになりますが、実はこれには以下のような事情があるそうです。


1988年、いすみ鉄道はJR木原線を引き継いで第三セクターとして開業。しかし、毎年1億数千万円もの赤字が続き、ついには2008年、再生委員会によって2年間の期限を切って存廃を見極めることが決まってしまいました。
その際、民間の経営感覚を取り入れようと採用されたのが、航空業界出身の現在社長を務めるT氏で、この方が行った改革のひとつがムーミン電車を走らせることだったそうです。戦争のない世界で生きているムーミンの世界観は、のどかなローカル線にぴったり。女性や子どもにも受けるだろうと、日本における使用権を持っていた友人の快諾を得てムーミン電車が誕生したというわけです。

こうした話を聞くにつけ、ローカル線の旅が楽しいのは、隠れたエピソードを知り、職員や地域の方々の努力や地元を愛する思いに触れるからだと改めて思います。
振り返ると 昔、外川駅でかじった銚子電鉄の「ぬれせんべい」も何とも懐かしい。
あれも赤字ローカル線の企業努力のたまものでした。
「日本はすべてふるさとで、できている」
真にローカル線の旅は日本人の心の琴線に触れる旅であります。
 大 多 喜 駅
大多喜は徳川四天王のひとり本多忠勝の城下町です。復元された天守閣が今は資料館として城下を見下ろしています。
この町の特産はタケノコ。季節ともなるとタケノコ狩りやタケノコ料理の看板が町のあちらこちらで見られます。手入れが行き届いた竹林で取れるタケノコは柔らかくてあくが無く、煮ても焼いても美味しく食えます

 大 原 駅 
いすみ線の終点です。改札を出ると売店があるのでお土産にクッキーを購入。特別にどうというものではないのでしょうが「職員や地元のみなさま、美しい景色をありがとう」という気持ちがわいて思わず手が伸びてしまいます。ムーミンをイメージする菜の花色のパッケージに入って可愛らしい。

さて、房総半島横断の旅もいよいよ終わりに近づきました。
商店街で店を探し、何か美味しいものでも食べてから外房線で帰ることにいたします。
そうですね、目指すは伊勢エビのフライでしょうか。
実はここ、いすみ市沿岸は砂場と岩場の混じった特殊な地形で高級魚が捕れる大変良好な漁場なのだそうです。殊に伊勢エビは全国屈指の漁獲高を誇っているのですが、ただ、取り扱いが難しいこの伊勢エビ、ひげや足が折れてしまうと価値がなくなる、というわけで・・・・関係者が考えたのが市場に出せない伊勢エビをフライにすること!
扱っているのは高級レストランではなく水産会社などが経営する小さな一膳飯屋ですが、食べた感想はお皿を置いた質素な木のテーブルがいきなり大理石のテーブルに変わってしまう、というくらいのリッチで豊穣な驚きの味。もちろんお値段は格安です。

えっ?家族へのお土産ですか。
格安とはいっても何しろ伊勢エビですから、お会計を済ませたら財布も空っぽになるでしょう。家族にはアジの干物でも買って帰ります。
はいっ!伊勢エビのフライは日頃頑張っている私のためだけのご馳走というわけです。
おかげさまで本日も美味しい旅で締められそうです。
以上  


               


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