心に残った言葉を書き留めています。書き留める言葉の出所は問いません。新聞、雑誌、テレビ、本。長いこと芸能界で体を張ってきたタレントさんや歌手の方の言葉もなかなか含蓄に富んでいます。
ノートの切れ端や新聞の切り抜きなど、書き留めた言葉の数々を繰ると、その頃の自分を思い出して懐かしくなります。また、ひと言添えて手紙を贈り、贈った相手から「今の自分の気持ちにぴったりだった」と感謝されることもあります。励ましたり、励まされたり、癒やしたり、癒やされたり。そんな言葉のいくつかをご紹介します。
漫画家のやなせたかしさんの言葉です。「やまない雨はない」「明けない夜はない」などと人生のトンネルに入った人を励ます言葉はいくつかありますが、更に一歩進んでその先に光が見えるところが素晴らしい。「手のひらに太陽を」と唄ったやなせさんらしい、優しさと希望に満ちた言葉だ思います。ご自身が、漫画家としての長い不遇時代をこの言葉に支えられのでしょう。不安だらけの受験生に贈りたいと思います。 |
タレントの堺正章さんが、ご自身が司会をされているTV番組の中でこんな風におっしゃったのを書き留めました。有名なコメディアンを父親に持って順調なデビューをし、グループ・サウンズ時代は人気ボーカリスト。解散してからも多岐にわたって才能を発揮され、抜群のファッション・センスと軽妙な会話で今も人を惹き付ける堺さんにしてこの言葉?ちょっと不思議な気がしましたが、考えてみるとTVに映る姿はごく一部だけ。何十年もマスコミに出続けるためには、見えないところで人一倍の努力や苦労を重ねて来られたに違いないのです。
想像力を持って相手に向き合ってみると見えないものが見えてくる。苦しい努力をしているのは自分だけではないと気がついた時、人は孤独から解放されます。
人が皆、我より偉く見えてしまうという方に贈りたい言葉です。
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明石家さんまさんが好きな言葉だそうです。おおらかに生を肯定し、前に進む力を秘めています。うまくいかないことがあっても「ドン・マイ」。何者にならなくても、ひとかどにならなくても、生きているだけであなたの人生は意味があるよと教えてくれています。
少し深刻な話になりますが、東日本大震災で家を流された方の話を聞いたことがあります。その後、亡くなった方の無念さが聞こえてきそうな被災地に立った私は、「家族全員が無事だったのだからそれだけでもう・・・」とおっしゃったその方の言葉を思い出し、その言葉の重さに気がついて心が震える思いがしたものです。「生きてるだけで丸儲け」。自分は世の中で価値がないと思い込んでいるあなたに、そしていじめで苦しんでいる若者に、是非この言葉が届いてほしいと思います。 |
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200本以上の映画に出演し、そのほとんどが前科者の役だった・・・
そういう役が多かったのに、一生懸命やっているとちゃんと見ていてもらえるんだなあと、素直にそのことを思いました。 |
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文化勲章を受章した高倉健さんが、その後に行われた記者会見で話されたものです。国民的ヒーローの高倉健さんですから、今更何も説明する必要などないのですが、実は私、信州のとある温泉旅館で健さんのお人柄に触れる素敵なエピソードを伺ったことがあり、受賞の挨拶を聞いてその日のことを思い出したのです。
ある日、千曲川の川原にひとりの青年がたたずんでいたそうです。その旅館の先代主人が声を掛けると、青年は、「自分は俳優志望だがなかなか役に恵まれず、前途に迷い旅に出たのだ」と話したそうです。ご主人は青年を自分の旅館に連れて帰り、歓待し、励まして東京に帰したそうですが、それが後の高倉健さん。健さんはそのときの恩を忘れずに、ご主人の誕生日には必ずプレゼントを持って訪ねてくれたそうです。ご本人が訪問できないときはお使いの人に手紙を持たせてでも続けてくれたと、そのことを話してくださった仲居さんはかなり年配の方でしたが、恐らく先代のご主人の下で働いていらっしゃったのでしょう、写真を見ながら話してくれるその表情にはご主人と健さんに対する尊敬や愛情が浮かんでいて、こちらも心に残る良い旅になったものでした。
このエピソードの中にも、授賞式の挨拶にも、成功するために必要で達成するには難しい、人生のキーワードが示されているように思います。肝に銘じたい言葉です。 |
友人から贈られた言葉です。
「お互い忙しい身だけれど、誕生日くらいは会って食事をしよう」とどちらともなく言い出して、長いこと続いています。食事会といっても、ランチを食べて近くを散歩するだけのささやかなものですが、目黒川、谷中の夕焼けだんだん、多摩川の夕日、振り返るといろいろな場所でいろいろな美しいものを見て来た気がします。
その年の私の誕生日は砧公園でした。食事が終わって外に出ると、晩秋の太陽は3時を過ぎたばかりだというのにすでに西に傾いて紅葉した木々を照らしています。「金色に輝く木の葉が綺麗」と言いながら見上げていると、一陣の風が吹いてきて、木の葉がまるで小判のように黄金色に反射しながらひらひらひらひら。「黄金が降ってくるよ」という私の言葉に応えて、友人が「私たちの心にも黄金が降り積もっているね」。
歳を重ねるのも悪くはありません。私たちはアーノルド・ローベルが書いた「お手紙」の中のかえるくんと、がまくんのように幸せな気持ちで暫く木々を見上げていました。
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