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先日ある方にオペラサロンに連れて行っていただく機会があった。そこは食事を楽しみながら若手声楽家の歌曲を聴くことができる。ピアノ伴奏で3部構成。この晩はソプラノ、メゾソプラノ、テノールの3人の若手声楽家の熱演であった。
私が一番驚いたのはプロの声楽家の声量である。サロンなので音響機器は全く使わずに歌を聴かせてくれるのであるが、一人で優に我々の十人か二十人分の声量である。それを聴いてかねてからの疑問が氷解した。
モーツアルト作曲の「フィガロの結婚」のエンディングは登場人物全員が合唱するが、ソロの受け持ちのある演者は全部でわずか11人である。私はエンディングのシーンがこの少人数で大合唱のように聞こえることが不思議でならなかったのであるが、一人一人がこの声量であれば11人もいれば大合唱のように聞こえるはずである。このことがやっと分かった。 |