大井川鉄道・SL列車の旅     






 大井川鉄道・SL列車
の旅は、東海道本線「金谷駅」のすぐ隣りにある、大井川鉄道「金谷駅」から始まります。この日のSL列車はC10の8。煙を吐いて黒い巨体が駅に入ってきたときには、思わず歓声と懐かしさが・・・・。「きかんしゃやえもん」の世界が始まっていました。



 駅には、子供連れの若い家族、鉄ちゃん(鉄道マニア)と覚しき男性(ひとり旅が多い)、何かのサークルでグループ旅行をしている還暦過ぎの男女、と三通りの集団が待ち構えていて、それぞれの集団がそれぞれの思惑を持って(得意になってやたら子供に話しかける、傑作をものにしようと真剣な顔で写真機を抱える、SLに乗ってはいるがおしゃべりに夢中で殆ど興味がない)、がやがやと列車に乗り込みました。因みに大井川鉄道のうち、
SL列車 が走るのは金谷(かなや)〜千頭(せんず)間で、時間にして1時間20分足らずの旅ですが、一日のうちでSL列車の本数は限られていますし、日によっては走らない日もありますから、その点を前もって確かめておかれた方が良いかと思います。料金は、金谷〜千頭間1810円で、それにSL急行料金が別途560円掛かります。この間、沿線にコンビニは見あたりませんし、駅近くに銀行も殆どありませんから(家山駅に駿河銀行があるが)、現金持参も必須です。



 木製の肘掛けに固いクッション、長距離にはきつそうな座席に座って、さて出発です。列車は暫くは民家の間をすりぬけるように進みます。「こういう場所にSL列車が走ることを了解するなんて、静岡の人は優しいのだなあ」と思っていると、間もなく民家もとぎれて大井川の流れが見えてきます。この先、列車は殆ど大井川に沿って進みますが、あいにく乗車した前日が大雨で、それがいささか残念でした。しかし、柳の葉が窓越しにそよいだり、遠くに茶畑が見えたり、白い川原が木々の間から見え隠れして、いつもは、さぞかし美しい流れだろうと、想像するに難くない車窓風景でした。 



 ほどなくして、予約をしておいたお客さんに車内でお弁当が配られました。様々な種類の中で、私達がふんぱつして頼んだのは
SL弁当、お茶付き1300円。大井川沿線の特産品が盛り込まれたお弁当で、味も良く、あっという間に完食してしまいました。列車には乗客のみが購入できるSL模型のおもちゃも販売にきます。限定ものに弱いのは人の常で、あちこちで注文の声が掛かっていました。



 煙が目に染みるかと心配したトンネルを無事に抜け、30分ほどして「家山(いえやま)駅」に到着です。一旦ここで降りることにしました。家山駅は駿河
銀行の他には何もない駅ですが、ここいら辺はお茶の産地ということで、名産の川根茶 を販売する店が駅前にあります。雑誌の情報によると、この店が持つ茶畑の中に茶所があるらしいというので、お土産用のお茶を買ったついでにお聞きすると、「丁度用事があるので車でお連れします」というご親切なお申し出です。大部迷ったのですが、次の電車の時刻を考えると行って帰っては少し無理ということで断念。もし時間があったら茶畑の中で茶の香りを嗅ぎながら、お茶を飲んでカテキンを補給するという贅沢を味わうのも素敵だと思います。



 さて、近くで写真を撮った後、再び家山駅に戻り、やってきた電車に乗り継いで(SL列車は暫く来ないので)、2つ先の
「川根温泉笹間度(ささまど)駅」へ向かうことにしました。「温泉に入ろう」という提案です。茶畑の中にある「川根温泉ふれあいの湯」は平成10年開業の新しい湯ですが、大井川に面して建物が建ち、露天風呂からは鉄橋を渡るSL列車が見えるような粋な設計がなされています。この日は通過時間とうまくタイミングが合わずに残念でしたが、入浴しながら見るSL列車の勇姿も思い出深いのではないでしょうか。お薦めの場所のひとつです。ゆっくりと湯に入って温泉で旅の疲れを取った後は、温泉水で作られた化粧水をお土産に買って「本日の行程はここまで」ということにして満足感と共に帰路につきました(帰りも、もちろんSL列車です)。化粧水1本2800円也。化粧水は今も使っていますが、美肌に効果ありという宣伝文句に嘘はなく、美肌効果はTV・CMのあの化粧品のように「私が証明です!」


 今回は、日帰りということで千頭までは行けませんでした。しかし、「いつかきっと行こうね」と約束したくなる、のどかな場所でした。1泊しながら周辺をゆっくり散策することをお薦めします。汽笛の音、子供達や父親の笑顔、おじさん、おばさんの笑顔。忘れてきた大切な何かに出会うような場所であることは間違いありません。



この日走ったC10の8 赤いポストが懐かしい家山駅 茶畑



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