ローカル線の旅  

 
ドバイ旅行記をお読みいただけましたか。素敵でしたね。でも、「行ってみたいけれど時間(お金)がなくて海外はちょっと無理」とおっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。お任せください。そんな貴方のために手軽な国内・ローカル線の旅を企画しました。潮風を受けて走る銚子電鉄SL列車の大井川鉄、そしてヒノキの天然林を走る可愛いトロッコ電車。懐かしい乗り物の数々をご紹介します。一緒にお乗りください。      S.A

   銚子電気鉄道線の旅  






 
まず、総武本線・銚子駅で切符を購入します。銚子駅〜外川(とがわ)駅間310円。もし、沿線の旅を楽しみたいなら「狐廻り手形」620円というのが便利です。当日に限り銚子駅〜外川駅間の乗降が自由で、沿線にある観光施設の入館料1割引きの特典も付いてきます。銚子駅で切符を切ってもらったら(自動改札ではない)、階段を上って2番線ホームに下り、ホームの端まで歩きます。ホームが終わるところが、銚子電鉄・銚子駅の乗り場です。つまり、JRに乗り入れている、というか、総武本線・銚子駅の端っこをお借りしているという感じでしょうか。しかし、1両編成のワンマンカーが「今や遅し」とばかりに、お客さんをお待ちしている姿は素敵です。マイナー感と相まって非日常の旅への期待が高まってきます! この日の車両は、デハ1001桃太郎電鉄ラッピング車というもの。青地に菜の花が描かれた華やかな車体は、子供連れやアベックでにぎわう休日の青空の下にぴったりとはまっていました。



 さて、電車は最高でも時速40キロというゆっくりとした速度で、銚子駅をあとにしました。全線6.4キロ。10駅で乗車時間わずか19分。すぐに「仲ノ町駅」に到着してしまいます。この駅はヤマサ醤油の工場に隣接してあり、風の向きによっては醤油の香りが漂います。工場の操業日だと工場見学も可能なので、夏休みのお子様の宿題に良いかもしれません。春には電鉄社員が種から育てた菜の花が沿線を彩るそうです



 次は「観音駅」です。坂東33個所27番札所の飯沼観音(銚子観音)があり毎月18日に開かれる縁日は多くの人でにぎわいます。しかし、鉄道ファンのお目当ては実は観音様でなく、この駅に併設されている電鉄会社直営のたい焼きの方にあります。駅名より「たい焼き」の看板の方が大きいくらいですが、電話で事前に注文して乗車時間を連絡しておくと、観音駅のホームまで駅員が届けてくれるサービスがあるそうです。



 「本銚子」からいくつかの駅を過ぎ、「海鹿(あしか)島」、「君ヶ浜」と、名前のとおりに少しずつ海に近づいて行きます。地名一つからも、その地方の様子が忍ばれるのがローカル線の旅の楽しさです。



 終点のひとつ手前の犬吠駅で降りることにしました。駅舎はポルトガル風に美しく装飾され、「銚電のぬれ煎餅」の直売所もあります。醤油が名産の銚子では煎餅はあちこちで売られていますが、銚電ファンにとって「銚電のぬれ煎餅」は特別です。何しろ、この売り上げで、昨年は枕木購入代金970万円、他にも車両の点検代、各駅の清掃代金などがまかなえたのだそうですから、塵も積もれば山というか、社員の方の努力に泣けるような話です。私達も早速購入しました。初めて食べたときには、正直、「これは何だろう」と驚いた味でしたが、後を引くというか、慣れるというか、醤油が染みた香ばしさと、なかなか噛みきれないいさぎの悪い食感がやみつきになります。この犬吠駅には参観灯台として有名な犬吠埼灯台があり、多くの観光客が足を向けています。入館料150円。展望台が付いていて太平洋が一望できます。360度の視界はストレス解消にはもってこいのスケールですから、近くの温泉と合わせて楽しむことをお薦めします。
                            
さて、終点の「外川駅
です。実は私は、この外川駅をこそ、ご紹介したいのです。何しろ木造の(失礼ながら)大正時代を思い出す駅舎 が素晴らしい!思わず「来て良かったね」と同行者に話しかけたくなる味があります。木製のベンチ、手書きの時刻表、駅舎の前に立つと、遠くに光る太平洋。この駅が数々のTVや映画のロケで使われたというのも頷けます。NHKの朝ドラ「澪つくし」にはこの駅が使われ、新人だった沢口靖子さんが何度も駅の前に立ったことが掲示板に書かれています。



 ここ、外川の港は今でこそ銚子に賑やかさを譲ってしまいましたが、350年前紀伊から鰯を追って移ってきた漁師が開いたと言われる古い港です。なだらかな細い坂道をゆっくりと下ってそんな港に足を向けるのも良いと思います。岸壁に沿って魚を食べさせてくれる小さい店が2、3軒あります。



 外川駅に戻り、電車を待ちながら駅のベンチに坐って「ぬれ煎餅」を囓っていたら、駅員さんに「この売り上げで随分助かっています」と声を掛けられました。赤字解消のために様々な努力をしている銚子電鉄を思って、私は煎餅を2枚も3枚も食べてしまいました



デハ1001
桃太郎電鉄ラッピング車
犬吠埼灯台 外川駅



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