映画『 夕凪の街 桜の国 』を観て
S ・ I  





 あらすじ 



「夕凪の街 桜の国」は、広島への原爆投下とその傷跡をテーマのひとつとした映画です。


   本作は二部構成で、第一部の「夕凪の街」は、昭和33年の広島市の基町にあった原爆スラム(「夕凪の街」)を舞台に、被爆して生き延びた女性の10年後の心の移ろう姿を描いています。

 主人公の
平野皆実(みなみ:麻生久美子→素敵です)は、街の小さな建築設計事務所の事務員。ある日突然、同僚の男性(吉沢悠→織田裕二をさっぱりした感じのひと)から告白され、それを機に将来を意識しますが、同時に自分が被爆者であることのコンプレックスに悩まされ、また、原爆症の発症に怯えます。




第二部の「桜の国」は、現在の西東京市を舞台に、皆実の弟の娘(つまり皆実の姪)の石川七波(ななみ)が主人公(田中麗奈→素敵です)の物語です。
 父親(堺正章→「星3つ」)の不審な行動が気になる七波は、ある夜、父のあとを尾けていくと、父は深夜バスに乗ってそのまま広島に行ってしまいます。七波は偶然出くわした友人の利根東子(中越典子→NHK朝のドラマ「こころ」のヒロイン→素敵です。)と一緒に尾行をします。父は、なにやら原爆に関わるあちこちの場所をうろつくのですが…。


 感 想 



 この映画は原爆をテーマにしていながら、原爆投下のシーンや、生々しくショッキングな映像はほとんどありません。反戦を直接訴えるシーンもありません。

 全体をとおして穏やかな描写が続き、特に第二部の「桜の国」はテンポが良く、七波による父親の尾行作戦はとても面白く、つい笑ってしまいます。しかし、それでいて、原爆が、被爆者とその家族に与えた影響を静かに強烈に訴えます。

 アメリカ映画のように、潤沢な資金を投下しなくても、ありふれた日常生活を描くことで、戦争の愚かさや、むなしさ等を描くことは十分にできるのだなと感じました。

 「夕凪の街」の主人公の皆実が、原爆症で苦しんでいるとき、「10年経ったけど、原爆を落とした人は私をみて『やった!また人を殺せた』とちゃんと思ってくれとる?」というセリフは胸に重く響きました。



 私は原作の漫画も読んだことがあったのですが、映画は漫画の構成をほぼ忠実に再現しつつ、個々のキャラクターに少々アレンジを加えており、原作とは別の味わいがあり、楽しめました。


この映画をみて、あらためて広島の平和記念公園に行きたいなと思いました。

                   


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