ア |
何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
一定のチームやグループを組んで組織的に行動する必要がある場合において、その組織について一定の指揮命令者が定められており、その人が統率し、事業場外労働の現場で直接労働指揮をする場合です。この場合には、労働時間の管理をする者がいるため、労働時間の算定が可能であり、みなし労働時間制の適用はないことになります。
他方で、上司に随行して出張、訪問活動を行った場合には、一定のグループで組織的な行動が行われたとはいえず、その随行者は、上司の活動と一体不可分な状況で事業場外活動にあたっているものといえます。そのため、上司の活動が事業場外労働に該当するものであれば、随行者の活動もそれと一体的なものとして労働時間の算定困難性を有するといえます。
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イ |
事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル(携帯電話)等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合
外回り営業の際、上司から、携帯電話で、訪問日時、場所、ルートなどについて指示を受け、従業員はこれに従って訪問し、訪問後は、携帯電話を用いて訪問内容を上司に報告させるような場合には、その従業員は、使用者の指揮監督下で業務にあたっているといえ、その労働時間の管理・把握が可能であるとして、みなし労働時間制の適用はありません。例えば、無線タクシーの運転手が、動静を連絡報告しながら会社の指示によって運行しているような場合がこれにあたります。
これに対して、訪問日時、場所等につき、全て従業員の自由裁量に任せて、急用の場合にのみ携帯電話で連絡させるような場合には、その従業員は、使用者の指揮監督下で業務に当たっているとはいえず、その労働時間の管理・把握は困難であるとして、みなし労働時間制が適用される可能性があります。
最近では、外勤社員にスマートフォンやタブレットを貸与する企業が増えていると思われますが、そのような社員に対してみなし労働時間制を適用するのであれば、スマートフォン等を用いての連絡・指示の頻度を抑えないといけないことになります。しかし、スマートフォン等を貸与する目的は、部署の管理者との連絡を適時可能とすることで業務効率化を図る点にあると思われますので、スマートフォン等を貸与しておきながら、連絡頻度を抑えてしまっては、本末転倒です。
このように、スマートフォン等の貸与制度は、みなし労働時間制と両立しない面があります。スマートフォン等貸与による業務効率化を強化するべく、みなし労働時間制を廃止するという考え方もあると思います。
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ウ |
事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場に戻る場合
まず事業場に出勤して、上司から、訪問先、業務内容、帰社時刻等の業務上の指示が具体的に行われ、かつその内容が作業予定表のようにきちんと定められており、従業員はそのとおりに業務にあたり、必ず帰社しなければならない、という場合には、使用者の指揮監督下で業務にあたったといえ、労働時間の算定が可能であるため、みなし労働時間制の適用はありません。
これに対して、訪問先、業務内容等を具体的に指示せず、従業員の自由裁量に委ねている場合には、みなし労働時間制が適用される可能性があります。
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