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イ 夫婦同氏から別氏へ
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そもそも,夫婦の氏を統一するという制度は,明治民法を起源としています。当時,「家」制度のもと,氏は「家」の名称でした。「家」とは,簡単にいうと,家長制度で,その家の長男が一番えらい,財産もすべて長男が継承するという考えです。
その「家」制度は,現行民法が制定され,「家」より「個人」を重視しようという考えのもと廃止されました。しかし,「家」の名称とされた氏は,現行法上もその名前が残りました。現行法下で「氏」は,個人の呼称となりました(もっとも,「氏」の性質については争いがあります。現在は,「氏」が人の同一性を明らかにするものであると同時に,それが純粋に個人的なものでなく,現実の家族共同生活をする個人の共通の呼称としての性質を有しているという考えが広まっています。私たちが暮らして行く中で,「氏」は自分を表すものであると同時に,家族の一人であることを表す面もあるからです。)。
この点,NHK氏名日本語読み訴訟において,最高裁判所が,氏名というのが,「個人を他人から識別し特定する機能を有するものであるが,同時に,その個人からみれば,人が個人として尊重される基礎であり,その個人の人格の象徴であって,人格権の一内容を構成するもの」であると判示したことは注目すべきです(最三小判昭63.2.16民集42巻2号27頁) |
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