(ア) |
評議の秘密等
公開法廷で行われた公判において裁判員として見聞きしたことについては、当初から公開され、傍聴人も見聞きしている内容ですので、その内容については基本的に話しても大丈夫だと考えられます。
しかし、公開法廷で行われるわけではない「評議の秘密」と、「評議以外の裁判員としての職務を行うに際して知った秘密」については、裁判員は秘密を守る義務があります。
「評議の秘密」には、例えば、どのような過程を経て結論に達したのかということ(評議の経過)、各裁判員や各裁判官がどのような意見を述べたかということ、その意見を支持した意見の数や反対した意見の数、評決の際の多数決の人数が含まれていると考えられています。
「評議以外の職務上知った秘密」には、例えば、事件記録から知った被害者の氏名、住所など、事件関係者のプライバシーに関する事項、裁判員の名前などが該当します。
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(イ) |
秘密を守らなかったらどうなる?
評議で述べた意見や経過が明らかにされると、後で批判されることを恐れて率直な意見を述べることができなくなってしまうおそれがあります。
さらに、評議の秘密を守ることは、裁判員のプライバシーの保護、お礼参り等報復行為の防止にもつながると考えられます。
例えば、暴力団が関係する事件で、「裁判員の誰それが被告人に不利な意見を述べた」ということが外部に漏れて報道されてしまうとしたら、裁判員は被告人や、被告人の関係者からの報復を恐れて、被告人に不利な意見を述べることを躊躇してしまうのではないでしょうか。そのような事態になれば、裁判が適正に行われなくなってしまう恐れがあります。このように守秘義務は裁判員制度を円滑に運用する上で極めて重要なものです。
そのため、守秘義務違反には6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金という厳しい刑罰が定められています。
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(ウ) |
裁判員等に選ばれた事実の公表に注意
「秘密」とは少し違うのですが、裁判員等でいる間は、裁判員等に選ばれたこと自体を「公にしてはいけない」とされていることにも注意が必要です。
たとえば、裁判員候補者名簿に登録されたことや、さらにくじで選ばれて裁判員候補者として裁判所に呼ばれたこと、最終的に裁判員に選ばれたことについて、出版、放送といった手段による場合やインターネット上のホームページ等に掲載するような場合など、裁判員等に選ばれたことを不特定多数の人が知ることができるような状態にしてはいけないということです。
世間の注目を集めている重大事件に裁判員として関与することになった場合など、ついついブログ等に書いてしまいたくなるかもしれませんが、そのような行為は禁止されていますので注意しましょう。
公にしなければ、日常生活の中で、裁判員等に選ばれたことを家族や親しい人に話すことは禁止されていませんし、上司に裁判員等になったことを話して、休暇を申請したり、会社や同僚の理解を求めることは問題ありません。その際に、裁判所からの選任手続期日のお知らせ(呼出状)を上司や同僚に見せることも可能です。
なお、裁判員等でなくなった後で自分が裁判員であったことを公にすることは禁止されていませんが、評議の秘密等については裁判員でなくなった後も漏らしてはいけません。
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