法 テ ラ ス
弁護士 上田 瑞尊   


 2004年6月に成立した「総合法律支援法」に基づき,昨年(06年)4月に「日本司法支援センター」が設立されました。「法テラス」と親しみある愛称で呼ばれる「日本司法支援センター」は,昨年の10月2日より全国一斉に業務を開始し,TVや新聞でもその様子が報道されました。

  なぜ,このようなものが設立されたのでしょうか,そして,どのような業務を行っていくのでしょうか。今回のHPではこれを取り上げてみました。



「法テラス」とは,「日本司法支援センター」の愛称であり,「法で明るく照らす」という意味だそうです。  



 この法テラスは,司法改革の目玉のひとつとして総合法律支援法に基づき設立された公的な法人であり,「民事,刑事を問わず,あまねく全国において,法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会を実現する」ことを基本理念としています。


 今まで一般市民が法的トラブルを解決しようとしても,そのために必要な情報やサービスを受ける場所が少なかったという現実を踏まえ,そのような社会からの脱却を目指して全国の地方裁判所の本庁所在地,地裁支部のある60数ヵ所のほか、弁護士がごく少ない,いわゆる「司法過疎地」などに事務所が置かれ,平成18年10月から全国で業務を開始しました。


  法テラスの業務には,
@情報提供業務,A司法過疎対策,B犯罪被害者支援,C民事法律扶助業務,D国選弁護関連業務があります。

  以下,各業務の内容を簡単にご説明します。




情報提供業務  


 情報提供業務とは,利用者からの問い合わせ内容に応じて,法制度に関する情報や,相談機関・団体等(弁護士会,司法書士会,地方公共団体の相談窓口等)に関する情報を提供する業務です。


 この情報提供業務の中核を担うのが,電話相談窓口であるコールセンターです。「知人にお金を貸したが,なかなか返してもらえない」,「訪問販売で高額な商品を買い後悔している」などの法的トラブルに巻き込まれ,「どのような制度があるのかわからない」,「どこに相談すればいいのかわからない」というときに,法テラスの専門オペレーターが,問い合わせ内容に応じて,その人の役に立つ法制度や弁護士,消費者団体等といった各種の相談機関・団体等を紹介します。このコールセンター(0570−078374)への問い合わせは,全国一律の通話料のみで利用でき,情報提供料等の料金は無料です。


 (※ただし,情報提供業務は,弁護士や司法書士等が個々のトラブルの内容に応じて法的判断を行い,解決方法をアドバイスするという法律相談業務とは異なります。)


 なお,法律相談業務に関して付け加えると,従来からの弁護士会の法律相談センターは市民のために法律相談業務を行い続けます。コールセンターへの市民からの架電は毎日2000件〜3000件に及んでおり(昨年10月、11月の状況),今後はそこから法律相談センターへの電話転送や紹介が期待されます。東京の場合は支援センター東京事務所と同じビルに弁護士会の法律相談センター(予約・問い合わせ 03−5367−5280)を設置し,両者が連携して市民にリーガルサービスを提供できるように体制づくりがなされています。




民事法律扶助業


 民事法律扶助とは,資力の乏しい方が法的トラブルに出会ったときに,無料法律相談を行い,必要な場合,法律の専門家を紹介し,裁判費用や弁護士又は司法書士の費用の立て替えを行う制度です。


 弁護士会が1952(昭和27)年以来支えてきた法律扶助協会のリーガルエイド事業は,2000(平成12)年に制定された民事法律扶助法で,法律扶助協会が指定法人となり事業費の拡大が行われました。しかし,運営費については国費の投入ができず,この点が課題となっておりましたが,この度の総合法律支援法の制定により,民事法律扶助について,国庫負担が前進することになりました。


 これらの経緯を経て,財団法人法律扶助協会が実施してきた民事法律扶助業務は,平成18年10月より,法テラスに引き継がれました。


 民事法律扶助の援助内容は以下のとおりです。

(1)代理援助 民事・家事及び行政事件に関する手続又はそれに先立つ示談
(2)書類作成援助 裁判所に提出する書類を司法書士又は弁護士に作成してもらう費用の立替え 
(3) 法律相談援助 法律相談援助 弁護士又は司法書士による無料法律相談

 民事法律扶助援助の申込窓口や申込み方法については,法テラス各地方事務所でご案内しています。




国選弁護関連業務


 従来の国選弁護制度は,刑事事件で起訴された人(被告人)が,貧困等の理由により自分で弁護人を選任できない場合に,本人の請求または裁判官の職権により裁判所が弁護士を選任するという制度であり,刑事事件で逮捕等の身柄拘束を受けたものの起訴される前の段階の人(被疑者)は対象ではありませんでした。


 しかし,平成18年10月からは,国選弁護制度の対象が,一定の重大事件という限定付きながら,起訴される前の段階(被疑者)まで拡大されました。


 これに合わせて,法テラスは,国選弁護人になろうとする弁護士との契約,国選弁護人候補の指名及び裁判所への通知,国選弁護人に対する報酬・費用の支払いなどの業務を行うこととなりました(そのうちの一部は,従来各弁護士会が行っていた業務を法テラスが引き継ぐ形となっています)。





司法過疎対策


 近年,司法試験合格者の増員とともに,弁護士の数は,年々増加しつつあります。しかし,それでも,日本にはいまだに身近に法律家がいないいわゆる司法過疎地域が多くあり,そのような地域では解決の糸口を見つけることもできずにトラブルを抱えたまま悩んでいる方も多くおられます。


 法テラスは,このような司法過疎地域における法律サービスへのアクセス改善に向けた対策を講じており,その対策の中核をなすのが「地域事務所」と呼ばれる弁護士事務所です。


 司法過疎地域を中心に全国各地に設置された地方事務所には,法テラスに勤務する弁護士が常駐し,民事法律扶助事件,国選弁護事件の他,一般に開業している弁護士事務所同様に,有料での法律相談,事件の受任等にサービスを提供します。




犯罪被害者支援


 法テラスは,犯罪の被害に遭われた方や,ご家族の方等に対し、刑事手続への適切な関与や,被った損害・苦痛の回復・軽減を図るための制度に関する情報を提供します。 


 また,民間支援団体を含む関係機関・団体との連携のもと,犯罪被害者支援を行っている団体等の活動内容についても紹介します。さらに,必要に応じて,犯罪被害者等の支援に精通している弁護士を紹介します。




最後に


 以上が,法テラスの概要です。法テラスの業務は始まったばかりであり,まだまだ試行錯誤の段階にあるようですが,その基本理念には,当事務所としても大いに共感できるものがあり,また学ぶべきところもあります。


 当事務所も,今後,刻々と変化する社会情勢に対応しながら,常に皆様によりよい法的サービスを提供することを目指して,日々精進を重ねてまいります。



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